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墓じまいのしるべ

相続放棄してもお墓は継げますか|お墓は相続財産と別の決まり。ただし遺産から費用を払う前に確認を

親の借金などで相続放棄を考えているが、お墓や墓じまいはどうなるのか。民法はお墓(墳墓)を一般の相続とは別に「祭祀を主宰すべき者」が継ぐと定めています。条文の関係と、放棄を考えている人が墓じまいの費用を払う前に確かめたいことを整理しました。

家族と相談公開日:情報確認日:作成:編集部

この記事で分かること

  • お墓(墳墓・祭具・系譜)は、預金や不動産などの相続とは別の条文で継ぐ人が決まることが分かる
  • 相続放棄の効果が「その相続に関して」相続人でなくなることであり、お墓を継ぐ決まりとは別であることが分かる
  • 放棄を考えている人が、親の預金など相続財産から墓じまいの費用を払う前に確かめたいことが分かる
  • 相続放棄の期限(3か月)・申し立て先・費用が分かる
白い花瓶に生けた紫の花

結論:お墓は相続放棄の対象とは別の決まりで継ぎます

親に借金があって相続放棄を考えている。でも、お墓はどうなるのか、墓じまいはしてよいのか——という問いです。

民法は、預金・不動産・借金などの一般の相続と、お墓(墳墓)を、別の条文で扱っています。

  • 一般の相続(第896条):相続人は、亡くなった人の財産に属した一切の権利義務を承継する
  • お墓(第897条):系譜・祭具・墳墓の所有権は、「前条の規定にかかわらず」、慣習に従って祖先の祭祀を主宰すべき者が承継する(亡くなった人が指定していればその人)

一方、相続放棄をした人は「その相続に関しては、初めから相続人とならなかったものとみなす」とされています(第939条)。福岡家庭裁判所の遺産分割調停のQ&Aも、祭祀財産(祭具・墓など)は「相続とは別の基準(慣習)で承継されるものであり、遺産分割の対象にはなりません」と説明しています。

この条文の作りから、相続放棄をしても、お墓を継ぐ人(祭祀を主宰する人)になることは条文の上で妨げられていないと読めます。ただし、あなたがお墓を継ぐ人になるかどうかは、亡くなった人の指定・慣習・家庭裁判所の判断で決まるもので、放棄の有無で自動的に決まるものではありません。個別の判断は、家庭裁判所や弁護士に確認してください。

放棄で手放すもの・手放さないもの

相続放棄と、お墓を継ぐ決まりの関係(民法の条文から整理)

預金・不動産・株など

継ぐ決まり
第896条(相続人が承継)
相続放棄をすると
初めから相続人でなかったことになり、受け取らない

借金などの債務

継ぐ決まり
第896条(相続人が承継)
相続放棄をすると
受け継がない

お墓(墳墓)・仏壇などの祭具・家系図

継ぐ決まり
第897条(祭祀を主宰すべき者が承継)
相続放棄をすると
条文上は第896条の相続と別の決まり。放棄とは別に、継ぐ人が決まる

放棄を考えているなら、費用を払う前に確かめたいこと

注意したいのは、相続財産を使ってしまうことです。民法第921条は、相続人が「相続財産の全部又は一部を処分したとき」は単純承認をしたものとみなす(=放棄できなくなる)と定めています(保存行為などは除く)。

墓じまいの費用や新しい納骨先の費用を、亡くなった親の預金など相続財産から払うことが、この「処分」に当たるかどうかを示した公的な説明は、本サイトでは確認できていません。放棄を少しでも考えているなら、相続財産から払う前に、家庭裁判所や弁護士に相談してください。

もう一つ、遺産分割の前に親の預金を引き出せる制度(民法第909条の2)がありますが、この制度で引き出した分は「遺産の一部の分割によりこれを取得したものとみなす」と定められています。放棄を考えている人がこの制度を使うかどうかも、先に相談しておくべき点です。制度の上限と扱いは亡くなった親の預金から墓じまいの費用を出せますかで扱っています。

放棄を考えている人が、墓じまいの前に確かめること

  • 相続放棄をするかどうかを決める期限(相続の開始を知った時から3か月)がいつか
  • 墓じまいの費用を、誰のお金から払う予定か(自分のお金か、親の預金か)
  • 親の預金を引き出したり、親名義の物を売ったりしていないか
  • お墓の名義人が誰か、名義を継ぐ予定の人は誰か
  • 放棄について相談する先(家庭裁判所・弁護士)を決めたか

第921条が対象にしているのは相続財産の処分です。自分の財産から費用を払う場合と、親の財産から払う場合を分けて考えてください。

相続放棄の手続き(裁判所の案内)

裁判所の「相続の放棄の申述」のページ(2026年10月27日に確認)によると、手続きは次のとおりです。

相続の放棄の申述(裁判所の案内より)

期限

内容
自己のために相続の開始があったことを知ったときから3か月以内(民法第915条。家庭裁判所で伸ばしてもらう申立てができる)

申し立てる先

内容
亡くなった人の最後の住所地の家庭裁判所

費用

内容
申述する人1人につき収入印紙800円分と、連絡用の郵便切手

主な書類

内容
申述書、亡くなった人の住民票除票または戸籍附票、申述する人の戸籍謄本など(続柄に応じて戸籍が加わる)

相続放棄をするには、家庭裁判所への申述が必要です(民法第938条)。家族の間で「放棄する」と話し合っただけでは、放棄になりません。

家族全員が放棄したら、お墓はどうなるか

相続人が全員放棄しても、お墓を継ぐ決まり(第897条)は別にあるため、お墓が自動的に宙に浮くわけではありません。ただ、継ぐ人が実際にいなくなり、管理料も払われなくなれば、公営霊園では使用許可の取消しや、管理者による改葬の対象になる場合があります。その流れはお墓の管理料を払わないとどうなる?と継承者がいないお墓を整理するにはで扱っています。

誰がお墓を継ぐかで家族の意見が分かれる場合は、家庭裁判所が継ぐ人を決める手続き(祭祀承継者の指定)もあります。手順と費用はお墓の継ぎ手が決まらないときにまとめました。

本サイトで確認できていないこと

  • 墓じまいの費用を相続財産から払うことが、民法第921条の「処分」に当たるかどうか。
  • 相続放棄をした人が、墓地の管理者(公営霊園・寺院・民営霊園)に名義の承継を申し出たときの扱い。
  • お墓を継ぐ立場(祭祀の主宰者)を辞退できるかどうか。

いずれも、個別の事情で結論が変わりうるため、家庭裁判所・弁護士に確認してください。

次に確認すること

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