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墓じまいのしるべ

亡くなった親の預金から墓じまいの費用を出せますか|遺産分割前の払戻しは1つの金融機関で150万円まで

親が亡くなって口座が使えなくなり、墓じまいの費用をどこから出すか困っているとき。民法の「遺産分割前の払戻し制度」なら、相続人は一人でも預金の一部を引き出せます。計算式と150万円の上限、引き出した分の扱い、兄弟との精算、相続放棄を考えている人の注意点を整理しました。

費用公開日:情報確認日:作成:編集部

この記事で分かること

  • 遺産分割の前でも、相続人が一人で親の預金の一部を払い戻せる制度があることが分かる
  • 払い戻せる額の計算式(相続開始時の預金額×3分の1×法定相続分)と、1つの金融機関で150万円の上限が分かる
  • 払い戻した分は、その相続人が遺産の一部を受け取ったものとして扱われることが分かる
  • 兄弟姉妹との精算の記録と、相続放棄を考えている人が使う前に確かめることが分かる
電卓とノート

結論:遺産分割の前でも、一部なら一人で払い戻せます

親が亡くなると、親名義の預金は相続人みんなのもの(遺産)になり、分け方(遺産分割)が決まる前に一人の判断で引き出すことは簡単ではありません。墓じまいの費用を親の預金から出したいのに、兄弟の話し合いがまだ、という場合に使えるのが、相続法の改正で設けられた遺産分割前の払戻し制度(民法 第909条の2)です。

法務省の説明では、各相続人は、預金の口座ごとに次の計算式で求めた額までは、他の相続人の同意がなくても単独で払戻しを受けられます。

単独で払戻しをすることができる額=(相続開始時の預貯金債権の額)×(3分の1)×(当該払戻しを求める共同相続人の法定相続分)

ただし、同じ金融機関からは150万円までです(民法第九百九条の二に規定する法務省令で定める額を定める省令)。条文には、払い戻したお金の使い道の制限は書かれていません。

計算の例

次の数字は、計算のしかたを示すための仮の例です。

払い戻せる額の計算例(仮の数字。相続人は子2人で、法定相続分は各2分の1とする)

A銀行の普通預金が600万円

計算
600万円 × 1/3 × 1/2
払い戻せる額
100万円

B銀行の普通預金が1,200万円

計算
1,200万円 × 1/3 × 1/2 = 200万円 → 上限150万円
払い戻せる額
150万円

A銀行に2つの口座(600万円と300万円)

計算
口座ごとに計算し、合計はA銀行で150万円まで
払い戻せる額
100万円+50万円=150万円

法定相続分は、相続人の組み合わせで変わります(配偶者がいる場合など)。自分の法定相続分が分からないときは、払戻しを求める前に確かめてください。

払い戻した分の扱い:自分の取り分から先に受け取った形になります

第909条の2は後半で、払い戻した預金については「当該共同相続人が遺産の一部の分割によりこれを取得したものとみなす」と定めています。つまり、払い戻した人が、自分の取り分の一部を先に受け取った扱いになります。

墓じまいの費用は、家族のお墓のために使うお金です。それを一人の取り分から出した形になるため、後の遺産分割で兄弟と揉めないよう、次のことを記録に残してください。

払い戻したお金を墓じまいに使うときに残す記録

  • どの金融機関から、いつ、いくら払い戻したか
  • 何に、いくら支払ったか(見積書・請求書・領収書)
  • 墓じまいの費用を誰がどれだけ負担する約束か(兄弟の合意の内容)
  • 遺産分割のときに、この支出をどう精算するか

費用の分担と精算の決め方は「墓じまいの費用は誰が払う?」で扱っています。

お墓(墳墓)は、預金などの相続とは別に「祖先の祭祀を主宰すべき者」が継ぐと定められています(民法第897条)。お墓を継ぐ人と、墓じまいの費用を負担する人が同じとは限りません。家族で話して決めてください。進め方は墓じまいの費用は誰が払う?で扱っています。

費用を出す方法の比べ方

墓じまいの費用を出す方法(民法・法務省の説明をもとに整理)

遺産分割前の払戻し制度

向いている場合
兄弟の話し合いが終わる前に支払いが必要
注意すること
1つの金融機関で150万円まで。自分の取り分から先に受け取った扱い

遺産分割を終えてから払う

向いている場合
支払いを待てる
注意すること
話し合いがまとまるまで工事の契約を急がない

誰かが立て替えて、後で精算する

向いている場合
払戻しの手続きを待てない
注意すること
立替えの記録と、精算の約束を書面で残す

家庭裁判所の仮分割の仮処分

向いている場合
遺産分割の調停・審判を申し立てている
注意すること
家庭裁判所が必要と認め、他の相続人の利益を害しない場合に限られる

最後の方法は、法務省の説明によると、遺産分割の審判または調停の申立てがあった場合に、相続財産に属する債務の弁済や生活費の支弁その他の事情で預金を使う必要があると家庭裁判所が認めるときに、預金の全部または一部を仮に取得させることができる、という制度です。

相続放棄を考えている人は、使う前に相談を

親に借金があるなどで相続放棄を考えている場合は、この制度を使う前に家庭裁判所や弁護士に相談してください。

  • 民法第921条は、相続人が相続財産の全部または一部を処分したときは、単純承認をしたものとみなすと定めています。
  • 第909条の2で払い戻した分は、遺産の一部の分割で取得したものとみなされます。

払戻しが相続放棄にどう影響するかを示した公的な説明は、本サイトでは確認できていません。放棄の期限は、相続の開始を知った時から3か月です(第915条)。相続放棄とお墓の関係は相続放棄してもお墓は継げますかで整理しています。

相続税との関係

墓じまいの費用を払っても、そのことで相続税の計算が変わるかは別の問題です。国税庁は、葬式費用は相続税の計算で遺産総額から差し引けるとしています。ただし同庁のNo.4129は、「墓石や墓地の買入れのためにかかった費用や墓地を借りるためにかかった費用」は差し引ける葬式費用に当たらないとしています。移す先の墓地や墓石の費用はこれに当たります。墓石の撤去など、それ以外の墓じまいの費用の扱いは、本サイトでは確認できていません。お墓と相続税の関係はお墓に相続税はかかりますかで扱っています。

本サイトで確認できていないこと

  • 払戻しを受けるときに、各金融機関が求める書類(戸籍・印鑑証明書など)と、手続きにかかる日数。金融機関に確認してください。
  • 払戻しを受けることが、相続放棄にどう影響するか。
  • 墓石の撤去や改葬の手続きの費用が、相続税の計算で差し引ける費用に当たるか。

次に確認すること

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